通信制高校と聞いて、みなさんはどのような
イメージをするでしょうか?中には、
「働きながら高校の卒業資格を取得するところ」
というような想像をする人もいるかもしれません。しかし、
現在の通信制高校は、以前のイメージから大きくかけ離れたものと
なっています。今回はその辺りについて記してみたいと思います。
通信制高校は、戦後、勤労青年たちに高等学校の教育の機会を
提供することが大きな目的として制度化されてきました。
しかし、今では、
生徒一人ひとりの能力や興味・関心、
そして学習スピードなど多様な教育的ニーズに応える場所
として、勤労青年のみならず、さまざまな生徒層を受け入れています。
その結果、現在、日本社会の少子化傾向にもかかわらず
通信制高校の生徒数は大きく増加しています。
■通信制高校の学校数と生徒数
昭和45年 | 平成2年 | 平成12年 | 令和2年 | |
学校数(割合) | 82校
1.7% |
84校
1.5% |
113校
2.0% |
257校
4.6% |
生徒数(割合) | 148,748人
3.4% |
166,986人
2.9% |
181,877人
4.2% |
206,948人
6.3% |
※(参照)文科省HP 通信制高等学校の質の確保・向上に関する調査研究協力者会議(審議まとめ)
また、通信制高校が制度化された当初と比較すると、
通信制高校に在籍する生徒の年齢が若年化しています。これは、
中学校卒業後の進路として通信制高校を選択
する子どもたちが増えてきたことによります。
■通信制高校の年齢別生徒数
昭和60年 | 令和2年 | |
15歳~18歳の生徒数 | 65,866人 | 173,620人 |
全体に対する割合 | 49.7% | 83.9% |
■通信制高校に通う生徒層
通信制高校に通う生徒の中には、
中学校時代に不登校であった生徒が少なくありません。
不登校経験のある生徒数の割合が全体の3割以上と
回答した通信制高校の割合は71%(※1)となっています。
また、不登校生徒以外にも、
中途退学経験者や特別な支援を要する生徒、
帰国子女・外国人生徒、
経済的困難を抱える生徒等、
さまざまな生徒を数多く受け入れています。
※1.H29文部科学省「高等学校通信教育に関する調査結果について」より
■学習のスタイル
通信制高校では、
レポート(R)・スクーリング(S)・テスト(T)
をクリアすることで、
高校の卒業資格を取得することができます。
通学する曜日や学習時間・方法などを、
自分で選択して学べる高校も少なくありません。
さらに近年では、情報通信技術(ICT)の急速な発展に伴い、
ICTを活用した学習のスタイルが進んできています。
特に昨年からのコロナ禍にあって、
オンラインによる学習なども盛んに取り入れられてきています。
時代の変化に応じた多様な学習のスタイルは、
今後ますます「強み」として期待をされています。
■今後の課題
前述した様に、時代の変化を捉えて柔軟な学習スタイル
がある一方、通信制高校には、
きめ細かな配慮やサポートを要する生徒たちも
少なくありません。
単に高校卒業資格取得を目指すということにとどまらず、
生徒一人ひとりにとって、
安全・安心な居場所としての役割や個に応じた育みに
どのように取り組むべきか、などの課題は数多くあると言えます。
それらの課題は、通信制高校の退学率などにも表れています。
平成28年文科省のデータによると、
通信制高校の中退率は全日制の5倍以上(5.5%)
となっています。
また、通信制高校の中には、不適切な学校運営や教育活動が
行われているところも見受けられ、その一部の学校のルーズさが、
業界全体の不信を招きかねないような状況も危惧されています。
新たな時代に新たな可能性を秘めた子どもたちを育むことが
期待される通信制高校。
その重要な社会的役割を担っていることを、
通信制高校に関わる全ての関係者が
自覚と責任をもって通信制高校の業界全体をよりよく発展させて
いくことこが求められているのです。